「みるみる大きくなってきました。」
と来院された16才のチワワさん(♀)。
診ると上顎口唇に2cm大の赤く丸い
しこりが認められ、口を完全に閉じることが
できない状態であった。
1年くらい前に同部位に小さいしこりが
あったという。
しばらく落ち着いていたしこりが、
ここ1ヶ月の間に、急速に増大し始め、
しこりの中心部が壊死し始めたという。
食餌は痛がることもなく食べているが
疼痛からか、時々体を小刻みに
振わすことがあるという。
自宅近くの病院で診てもらっていたそうだが
年齢や心臓疾患により、手術は難しいと
言われたという。
確かに上記のことから、麻酔のリスクは
高いと思われた。
またしこりは上顎切歯の歯肉から
発生しているようにみられることから
しこりを完全に取り切るためには、
上顎の一部も切除する必要があるように
思われた。
飼い主様と相談の結果、年齢、麻酔時間や
オペの体への影響を考慮し、今回は深部を
含めた根本的な切除ではなく、しこりが取れる
範囲での切除をすることとなった。
なるべく心臓に負担がかからぬよう
全身麻酔をかけ、オペを始めた。
しこりは切歯を巻き込むように形成されており
しこりの影響により、切歯が1本ぐらついていた
ため、抜歯した。
そしてしこりの固着部をできるだけ広範囲に
切除した。
切除時じわじわとした出血が認められたが
しっかり圧迫しながら止血した。
しこりは2cm大でほぼ球状でやや硬かった。
オペのモニターを確認したが、大きな異常を
示していない。
麻酔を切り覚醒を待った。
年齢的なこともあり、覚醒はやはり時間を
要したが、無事オペを終了した。
高齢で心臓病を併発している仔でしたので
麻酔リスクが高いケースでした。
オペをしない選択肢もありましたが
このままオペをしないでいたら、壊死部は拡大し
しこりの増大により食餌もとれなくなる可能性も
ありました。
飼い主様との相談のうえ、今回オペをすることと
なりました。
しこりは現在病理検査中です。
結果が気になるところですが、
術後より口を閉めることが可能となり
食餌もバリバリ食べています。
顔の表情も晴れやかになったように見えます。
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