「2~3日前からブーブー言っています。」
と来院された13才のアメショの女の仔。
「ブーブー」?
詳しく聞くよりも先に
診察室に入った時からズーズーとした
鼻づまり様の呼吸音が聞こえた。
鼻づまり様の音のほか、鼻汁やくしゃみ、
咳などの症状は全くないとのこと。
食欲もとても旺盛で、ガツガツしているという。
鼻炎を疑い、抗生物質を5日間使用してみた。
5日後来院。
「食べても食べても吐いてしまう」とのこと。
抗生物質の影響なのか、あるいは鼻炎による
鼻詰まり状態の影響(採食の際、呼気時と
吸気時の兼ね合いで吐いてしまう)
の可能性も考えられた。
夜も就寝時にズーズーしているため
睡眠も充分とれていないとのことであった。
嘔吐があることから、内服薬をやめ
2週間持続する抗生物質を
注射した。
2週間後来院。
吐くのはなくなたが、ブーブー音は
少し改善した程度で、まだはっきりと
呼吸の度に聞こえるとのこと。
血液検査も実施したが、気になる値は
認められなかった。
再度同じ抗生物質の注射をうった。
2週間後来院。
「少し改善した程度」と来院。
嘔吐も鼻汁もなく、たまにくしゃみをするとのこと。
しばらく他の抗生物質に変えて経過を見守った。
飼い主様曰く「嘔吐はないが、良くも悪くもない」という。
診察時も、ほぼ変わらずズーズーしていた。
鼻炎から副鼻腔炎になっている可能性、あるいは
鼻腔内の腫瘍の初期の可能性も考えられた。
そのため抗生物質の効果が得られづらい
かもしれないこと、改善がみられるとしても
時間がかかるであろうと飼い主様に説明した。
その後週一回ペースで受診していただいた。
初診時から大きな改善も悪化もない状態が
約2ヶ月続いた。
その間たまに嘔吐が認められ、食欲も徐々に
低下し、体重も約500g減少した。
それからさらに約1ヶ月が経過した頃
前頭部が急に盛り上がり、右眼も
開けづらそうと来院。
診ると前頭部がこぶのように隆起し、
右の眼は開けづらそうであった。
それから1週間後、「血だらけです。」と来院。
隆起部が自潰し、血液様の膿が排出された。
膿を滅菌綿棒で採取し、検査センターに細菌培養
および抗生物質の感受性試験を依頼した。
患部を洗浄し、消毒液のしみ込んだガーゼを
自潰部に詰めた。
それから5日後、患部はかなり改善し食欲も
戻ってきたと来院された。
あれほど改善しなかったブーブー音が
自潰した頃から、全くしなくなったという。
その後、前頭部はみるみる改善していった。
膿は出なくなり眼もしっかり開き、被毛も生えてきた。
体重も増加していった。
【発毛もみられ、ズーズー音も消失し、一時期に比べ体重も増加している。】
今回のこの仔は、鼻副鼻腔炎と思われます。
鼻腔は直接副鼻腔へ通じているため、
鼻炎と副鼻腔炎はほぼ同時期に
発生するとされている。
猫の副鼻腔は前頭洞などに位置する。
猫において鼻炎の原因はヘルペスウイルスや
カリシウイルスなどのウイルスや細菌、真菌などの感染、
腫瘍、アレルギーなどが考えられており、時に特発性
(原因不明)のこともある。
予後は原因と程度によって大きく異なる。
原因にもよるが、治療に長時間を要することが多い。
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