「爪」 時には・・・。

「先生!!!」
と言ってやや興奮気味に来院された飼い主様。
ダックス(2才♀)を抱っこしていた。

「!!!」

見ると飼い主様の手にも服にも血がついている。
そしてその仔の左前肢趾端は、真っ赤に染まっていた。
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緊急性を察知し、飼い主様から状況説明だけを
短時間で聞いた。
何でも同居犬のチワワさんとじゃれているのか
半分喧嘩しているのかという時に、血が出ていることに
気がついた。最初は様子見ていたが、止まらないので
連れてきたという。

診ると、左前肢第3趾の爪が、ほぼ根元から消失し
被毛と共に出血で真っ赤に染まり、さらに同部位から
細いながらも、ぴゅぴゅと動脈性の出血を呈している
状態であった。
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すぐに患部にガーゼをあてがい、約5分間圧迫止血を
実施した。さすがに痛みで患部を引っ込めようとしたり、
鳴いたりしたが、とにかく止血を続けた。
5分ほどたち、ゆっくりガーゼを外し診たが、
ぴゅぴゅと変わらず出血する。
その後も何度か試みたが止まらない。
これ以上繰り返しても難しいと判断し、飼い主様同意の下
全身麻酔の下、電気メスによる止血に踏み切った。

麻酔をかけ気管チューブを挿管し、吸入麻酔で維持。
出血部の被毛をバリカンで短く刈り、
出血部位の血管に、電気メスを当てる。
1度では改善せず、数回繰り返してようやく止まった。

【電気メスで止血後の患部】
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後はガーゼやテープなどで同部位を保護するように
巻いた。

【爪がなくても元気でした】
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普段の診療で、爪が折れたり今回のように
爪が根元から取れてしまったりして
来院されるケースは少なくありません。
しかしながら今回のようにガーゼなどで
圧迫しながら止血しても止まらないケースも
まれにあります。爪には動脈も走っているため
出血量も少なくありません。
いずれにしても爪のトラブルの際には、早めに
病院を受診されることをお勧めいたします。
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コメント

  1. より:

    深刻なケガに眉をひそめて読んでゆくと
    ニパッと笑ったワンちゃんの可愛いお顔(笑)
    病態との落差にホッとするやら可笑しいやら(笑)
    うちは猫ですが、かれこれ20年近く前にやはり喧嘩で爪を抜いた?子が。
    この子は加害側で、発見時は被害側の手当て(お尻噛まれて落ち込んでた)で気付いてやれませんでした。
    深夜帰宅して気付き、翌日病院に行って噛まれた子の手当てをしていただき、帰宅してやっと爪が丸々一本ないことに気付き。
    あまり出血してなかったのは運が良かったのですね。
    慌てて病院へ電話すると、確かに出血について訊かれたような。
    血は止まってるんですけどっ!とアワアワしながら報告すると、じゃあほっといてOKとのこと。
    えー!爪一本抜けたのに!というと、連れて行ってもヨーチンで消毒するくらいですよ、包帯巻くわけにいかんし(笑)と。
    傷口が治らないようならまた来てくださいで、結局そのまま傷口は綺麗に治りましたが、爪は亡くなるまで生えて来ませんでした(そりゃそうか…)。
    以来、爪のケガは大したことないんだと思ってましたが
    手先のケガでも、血が止まらないと全身麻酔で大変になることもあるんですね。
    気をつけなくては。
    ところで、激しく焦ったり驚いたり腹が立ったりするとハアハアするんですが(私が)、
    運動したわけでもないのにハアハアしてると、なんか変態みたいですよね…。

  2. 獣医師Tommy より:

    いつもコメントありがとうございます。
    爪のトラブルでのレアケース、ご理解していただき幸いです。
    以前のネコさん、大事に至らずよかったですね。
    ハァハァ・・・大丈夫ですか。
    この暑さの影響もあるかもしれません。
    私は診れませんが、念のため受診された方がよろしいかもしれませんね。
    お大事に!

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