「ネコの舌」(その1)

「仕事から帰宅したら、部屋に
血が垂れていました。」と来院された
6才の黒猫さん。

もう一頭同居猫がいるのだが、
この仔の口に血のようなものが
ついていたという。
口を開けて診てみたが、舌や歯肉などに
傷など出血部位は、認められない。
ただ口の中の色が、やや白いので
貧血を疑い血液検査を実施した。

検査結果が出るまでの間、この仔と共に
待合室で待ってもらっていると、
「先生、血が・・・」と飼い主様に呼ばれた。
すぐに診察室に入ってもらい、
再度口を開けた。

「!!!」
口の中が血だらけである。
硬口蓋の一部から湧き水のように、
血がどくどく溢れ出ていた。
すぐに出血部位をガーゼで抑え、
圧迫止血した。
しかしながら、口の中にガーゼを
当てられていることをとても嫌がり、
暴れてしまう。
止血されるの間、じっとはしてくれない様子。
それでも何とか圧迫止血しようと、こちらも
必死に抑える。
しばらくして抑えたガーゼをゆっくり離すが、
どくどくした出血は止まらない。
この勢いのまま出血が続けば、
極めて危険である。
先程の血液検査の結果が出た。
貧血の値は28%。(正常は約35%)
やや貧血が認められた。
飼い主様に血液検査結果と今の状況を説明した。
相談のうえ、麻酔をかけ電気メスでの
止血を試みることとなった。

すぐに全身麻酔をかけ、再度出血部位を精査した。
出血部位をガーゼで抑えながら、よく診てみると
硬口蓋の一部に5mm程の潰瘍が見つかった。
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この部位を電気メスで止血した。
とりあえず出血は止まった。
麻酔から覚醒するまで見届けてから
飼い主様に、お返しすることとした。
帰宅しても麻酔の後なので、食餌は抜いてもらい
明日朝から与えてもらうよう説明した。

翌朝「朝食後また出血し、口の中が
血だらけです。」と来院された。
                    (つづく)

最初に口の中を診た時には
出血もなく、出血部位も判りませんでした。
血液検査を待っている間に急に出血がありました。
おそらく診察時の興奮や採血時に血圧が上がったため
キャリーに入れた直後から出血し始めていたのでは
と推測されました。
どくどくとした動脈性の出血でしたので、とにかく早く
止血することを第一優先に考えました。
しかしながら・・・。

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