「ネコの舌」(その2)

「夜の間は出血なかったが、朝ごはんを与えたら
口の中が血だらけになりました。」と再来院。
診ると口の中が蒼白であった。
貧血の値が、17%になっていた。

とりあえず半日お預かりして経過を見た。
午前中は全く出血がなかった為、午後になり
缶詰フードを少量与えた。
空腹もありすぐに完食した。
その直後、口が血だらけになった。
口を開けると、同部位からであった。
暫くすると、止まり始めた。
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それから暫くすると、全く出血はなくなった。

そのから数時間が経過した。
体をグルーミングした後、また出血。
口が血だらけ。

フードの採食時やグルーミングの際
猫のざらざらした舌が潰瘍部を削る結果となり、
止まっていた血管が傷つき、
出血が繰り返されると思われた。

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貧血の値は14%にまでおちた。
舌が潰瘍部にあたっても、出血しないように
する方法をあれこれ考えた。
いくつか本も見てみたが、決定打が浮かばない。
思い切って再度麻酔をかけ、潰瘍部を縫い合わせて
みることにした。

飼い主様に説明し同意のうえ、連日になるが
全身麻酔をかけ、硬口蓋の潰瘍部を細い糸で
4糸縫合した。
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翌日やや口を気にしていたが、食餌を口に運んで
少量与えてみたが、普通に口を動かしながら
食べてくれた。
食後の出血の有無を注意深く観察した。
食後5,6分しても出血はない。
2度目、3度目の食餌の後も注意したが
出血は認められなかった。

夕方、飼い主様が面会に来られた。
「いつもの顔になっています。」
元気そうにケージにすりすりするわが仔を見て
嬉しそうにそうおっしゃった。
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術後4日がたち、食欲も旺盛となり、貧血の数値も
22%にまで回復。
出血には用心しながら、間もなく退院の日を迎える。

今回の硬口蓋の潰瘍の原因については
ハッキリ判りませんでしたが、
飼い主様によると、硬い籐?でできた物を
不在時に、自らかじって破壊していたとのこと。
もしかしたらその際、潰瘍になるほどの傷を負った
可能性は考えられます。
潰瘍部からの動脈性の出血が一旦止まっても
やすりのような舌で、再出血を繰り返す今回の
ケースは、絆創膏を張るわけにもいかず
スキンボンドでも舐めとられるでしょうし
縫合する以外なかったように思います。
結果的には、術後一度も出血はありませんでした。

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