「お尻のしこりが大きくなってきています。」
と来院された14才のmixの男の仔。
詳細を聞いてみると、1年ほど前にお尻の
しこりに気づき、近くの病院で診てもらった
という。
その後、しこりが徐々に大きくなり、
新たなしこりもでき始めたため、再度
受診したが、様子をみるよう言われたという。
時間の経過とともにしこりはさらに増大し、
痛痒いためか、しこりをぺろぺろ舐めはじめ、
しこりは自潰し、出血を伴うようになったという。
以来パンツをはかせ、カラーをつける生活が
続いているという。
今後のことをあれこれ考えているうちに
しこりはさらに増大し、現在の状態に
至ってしまったという。
お尻のしこり以外は、14才のわりには
元気で食欲も旺盛であった。
とりあえず、しこりの細胞診を行った。
しこりに注射針を穿刺し、シリンジに
陰圧をかけながら細胞を吸引した。
針を抜くと、針穴からぽたぽたと
それなりの出血が認められた。
数日後、細胞診の結果が来た。
上皮性の腫瘍の可能性が高い。
異形成などの悪性所見は今回の検査に
おいては認められなかったとのことであった。
細胞診の結果を待っていた数日の間ですら、
しこりは増大傾向を示し、しこりからの出血も
増加していった。
飼い主様に年齢を含めた麻酔のリスクや
術後のケアーなどを説明したが、オペを強く
希望された。
術前に血液検査や胸部レントゲンなどを
実施したのちオペをすることとなった。
全身麻酔薬を静脈から導入し、
気管チューブを挿管し、オペを始めた。
肛門周囲の被毛をバリカンで刈ってみると、
しこりがより鮮明に、より大きく見えた。
肛門周囲には大小含め約7ヶ所以上の
しこりがあったが、全てのしこりを切除することは
難しいと判断し、何とか4つのしこりを切除した。
最も大きいしこりは、深部にまで達しており
外科的マージン(外科的安全域)をしっかりとる
ことは厳しいように思われたが、できる範囲内で
切除した。
腫瘍によっては、去勢をすることにより
腫瘍が縮小する可能性があったため
今回去勢手術も同時に行った。
【術後約1ヶ月の状態】
残っていたしこりも縮小傾向が認められ
術野も発毛してきた。
カラーがなくても、全く気にしていないという。
今回は内科的治療では限界を感じるケースでした。
しこりの増大のスピードも速く、パンツを替えるたびに
出血が認められ、四六時中カラーを装着し続ける生活。
パンツやカラーを外せる日が見えない状況でした。
できることなら、もう少ししこりが小さい状態でオペができれば・・・
と思った次第ですが、現実問題この状況を何とかしないと
という思いでした。
今回術中の生体モニターも安定しており、何とか無事に
オペをすることができました。
術後の病理検査では、性ホルモン関与の腫瘍でしたので
今回切除できなかったしこりも少しずつ縮小傾向が
認められております。
術後の現在、お尻を気にすることも舐めることもなく
パンツもカラーもない生活を送っております。
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